ここでは、生前贈与や不動産管理法人の設立など、知っておくべき相続税を節税する4つのテクニックをご紹介します。
節税テクニックについてのお問い合わせやご質問は、伸寛まで。
相続税は、人が亡くなった時に払う税金ですが、生前に全部の財産を贈与して財産が無くなってしまえば、相続税はかかりません。贈与税は高い累進税率になっていますが、相続税の累進税率より低い範囲のところで贈与をしておけば、相続でもらうより確実に低い税負担で財産をもらうことができます。
- 贈与税の計算方法 (速算表による)
【年中に贈与された財産の価額-110万円】×税率-控除額
贈与税は、もらった人を基準に計算しますので、その年で何回も贈与を受けている場合や、何人からも贈与を受けている場合はそれらのすべてを合計します。その年の合計が110万円以内であれば贈与税は無税で、申告義務もありません。例えば、310万円贈与すれば、贈与税率は10%で20万円の贈与税が課されます。470万円の贈与なら、税額は47万円になります。これは贈与した金額の10%の税負担率になり、この金額の贈与を続ければかなりの資産の贈与が可能となります。
- 贈与の認識が、贈与する側、される側双方にあること。
- 贈与契約書とともに、通帳などに、出す側と入れる側に証拠を残しておく。
- 贈与財産の管理は、通帳も印鑑ももらう方が管理する。
- 贈与税は、もらう側が納付する。
また、相続開始時3年内に相続財産を被相続人から相続または遺贈で取得した者は、その贈与財産額を相続税の課税価格に加算して相続税を計算することになっており、注意が必要です。つまり、3年以内に贈与を受けた者であっても、相続人や受贈者でなければ加算されません。
- 早めに贈与を開始すれば、より大きい効果が得られる。
- 将来値上がりが期待できる財産の場合、値上がり部分は贈与者の相続財産から除外できる。
- 不動産は相続税評価額を引き下げてから贈与することができるので割安な贈与が可能。
- 世代飛ばしの贈与が可能。(相続税には、孫への相続には二割加算の適用がある)
- 贈与税以外の移転コストがかかる。(登録免許税、不動産取得税など)
養子縁組は、養親の老後の扶養や遺産相続の後継者確保などを目的にして行われますが、民法上は養子の数に制限はありません。
しかし、相続税法上の法定相続人の数のカウントでは、養子は次のように規定されます。
相続税法上、基礎控除額の算定や、生命保険金・退職手当金等の非課税限度額の算定において上記の養子が法定相続人の数として加えられるため、
税額が軽減されます。
また、養子は民法上一親等の血族となり、財産の取得原因が「遺贈」ではなく「相続」とすることができるため、登録免許税や不動産取得税を軽減できます。
更に、その養子が未成年者・障害者であれば、未成年者控除及び障碍者控除の対象にもなります。
- 養子縁組した時点で、すでに被相続人が意識不明状態にあり当事者能力がない場合などは、節税効果のみを目的としたものとして、縁組の意思を欠くものとして無効にされます。
- 養子縁組で、孫など本来は相続人でないものが法律上相続権を持ち、遺留分も持つことになります。遺言書等で相続財産を具体的に指定しておく等、相続人間で「争族」に発展しないように配慮する必要があります。
- 孫を養子にし一親等血族にすることで、税額の二割加算逃れを期待できましたが、平成15年の税制改正で、孫の養子縁組も、二割加算の対象となりました。税制の改正には要注意です。
不動産管理会社は、大きく以下の2通りに分類できます。
- これは、不動産を管理するための法人で、所有者は、直接入居者から賃料を入金しますが、物件を管理してもらう名目で法人に管理料を支払います
(管理委託方式と呼ばれます)。管理料が経費と認められるため、所有者の所得税は減りますが、管理料が高額になると税務署から否認されます。
管理型法人にはもう一つ、一括賃貸方式というものがあります。
これは、法人が物件を一括で借り上げ、入居者に賃貸する方式で、賃料(転貸賃料)は法人に入金されます。 そして、法人が空室リスクを負い、物件を管理する名目で一定額を法人に残し、その差額が所有者に賃料(一括賃貸料)として支払われます。 これは、相続時では建物は貸家、土地は貸家建付地として評価されます。
この方式では、管理委託方式よりも多くの委託料を所有者に支払うことができ所有者の所得を更に減らすことができますが、 やはり、税務署はあまりに高額の委託料(たとえば20%以上)には税務否認する可能性があります。 - 上記の管理型法人型との最大の違いは、法人が実態として不動産の管理をしていると税務署が認めるところにあります。
(委託方式では、管理会社の管理内容は、せいぜい見回り点検程度の実態しかないと見られます)
この方式は、土地は個人でそのままですが、建物を法人所有にします。法人が建物を新築しても、また既存の物件を法人が買い取ってもよいのです。
これにより、賃料は所有者である法人が全額受領し、その内から法人の同族の役員に報酬という形で資金が流れることになります。
所有型のメリットは、今まで個人の不動産所得だったものが、収入は全て法人になり、 親族の役員に役員報酬として分散されることで累進税率である所得税の減額につながること、 更に、生前に同族の役員である相続人に財産が蓄積されることで相続税の支払い原資の用意ができることです。
所有型の法人でも、検討上、問題点がないわけではありません。 建物の売却時の税金、法人に借地権発生の問題、法人の資金調達の問題がありますが、解決できない問題ではありません。詳しくは、別途お問い合わせください。
相続税の申告において、不動産の評価減が大きく期待できるのは「広大地の評価」です。
これは、その地域における標準的な宅地の地積に比して、著しく広大な宅地で開発行為を行う場合に公共公益的施設用地(開発道路)の負担が必要と認められる土地が対象となります(つまり、開発を伴う戸建用地が対象です)。
これに該当しますと、土地の評価は45~65%減額します。
- 広大地の評価の計算方法
広大地の評価=正面路線価×広大地補正率(注)×地積
(注)補正率(0.35が下限)=0.6-0.05×地積/1000㎡
⇒地積(㎡) | 1000 | 3000 | 4000 | 5000 | 6000 |
---|---|---|---|---|---|
補正率 | 0.55 | 0.50 | 0.45 | 0.40 | 0.35 |
- 広大地であること。(500㎡程度以上)
- マンション適地でないこと。
- 最有効使用をする場合潰れ地(道路)が生ずること。
つまり、容積率300%以上の地域や角地、間口の広い土地で潰れ地を生じさせずに区画割のできる土地などは該当しません。
また、大規模店舗やファミリーレストランとして現に有効利用されている土地も同様です。
この広大地適用は、大変減額効果が大きいため、税務署側も厳しく適用条件を検討します。そのため、税務否認される場合もあります。 税務署にこの特例の適用を申請するためには、納税申告書に、前述の適用条件をクリアーしていることの説明資料を添付しますが、 この資料は不動産の経験と実務的な知識が必要ですので、不動産の専門家でなければ作成することができません。
いずれにしても、減額効果が大きいですので、500㎡以上の宅地をお持ちのかたは一度検討される価値は十分あると思います。