相続放棄に思うこと 

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相続全般近頃、相続放棄に関するご相談が立て続けに舞い込んできています。
私のような小さな事務所にもご相談に来られるからには、世間的にはこの現実に差し迫られ困っている方が多くおられるということが容易に想像できます。

「相続放棄」とはどういうことなのでしょうか。
相続財産には、プアスの財産とマイナスの財産があります。マイナスの代表的なものは借金ですが、相続ではどちらか一方だけを引き継ぐということができません。プラスの財産がマイナスの財産を上回っていればそのまま相続する(「単純承認」と言います)
ことでいいのですが、調べてみてマイナスの財産が多い時もあります。このような場合、選択できるのが「相続放棄」です。(「限定承認」というのがありますが、ここでは割愛します)
 この相続放棄をするには、家庭裁判所に相続開始を知った時から3ヶ月以内に相続放棄の申述(申し出)が必要です。何もしなければ単純承認とみなされてしまい、マイナスの財産が多くても言い逃れができなくなります。相続放棄とは、一言でいえば一切の遺産を相続しないということです。つまり、最初から相続人でなくなり、その人の相続権はなくなります。これに伴い、放棄した人の子や孫の代襲相続権もなくなります。

ご相談にこられた方の一人は、上述した3か月の期限についてのお問い合わせでした。ご本人はご主人と25年前に離婚しましたが、ご主人はかなりの借金を抱えており、また病弱だった様です。そのご主人との間には子供があり、今同居中です。ご心配なのは、元のご主人が亡くなり、その借金を子供が知らずに相続してしまうのではないかということでした。
お子さんの幸せを考えるならご心配も当然のことですし、25年前のことまで心配しなければならないというのは大変酷なことです。しかし、判例はこの点について、「相続であることを知ってから3か月以内」としており、債権者等からの請求を受けてから放棄しても間に合うことになりますので、対応は出来そうです。

また、もう一方のご相談は、相談者の叔父が借金を残して30年前に亡くなりました。相続人は当時10名です。その時点で全員が放棄したとのことですが、相続発生から2年経過した時点で叔父の債権者が叔父の自宅に相続人10名の相続登記を代位登記しました。今では、法務局も調査して適切に対応するでしょうが、当時はそのまま登記を受けてしまったようです。その為30年経過した今になって、役所から登記名義人10名に固定資産税の請求が来ました。叔父には2号さんがおり、つい先ごろまでその方が自宅に居住していましたので、代わりに固定資産税を払っていたようです。この度、なんらかの理由でその支払いが滞ってしまったようで、市から10名に請求が来ました。
 私からは、取りあえず相続放棄のの証明書を裁判所から取り寄せ、申述書を添えて市に送るようアドバイスしました。市とすれば、現在の所有者とされる人に粛々と請求したのでしょうが、真の所有者ではありませんから、登記しなおさなければなりません。その手続きは相続人全員に連絡をつけることから始めますが、相続人はその後の相続で、10名以上に増えていますので結構手間がかかると思われます。これも、30年間経ってから発生した問題です。

この様に、相続放棄に関わるものはのちのちの代に影響を及ぼし、相続人の数が増えれば増えるほど問題の処理も複雑になります。このような思わぬ負担を負わないための相続放棄について関心が増えている背景には、核家族化や離婚の増加などにより、相続人同士の現実の関係が希薄化している実態があると感じざるを得ません。

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伸寛代表紹介
伸寛代表紹介

代表取締役社長 萩原和雄

代表取締役社長
萩原和雄

  • NPO法人相続アドバイザー協議会会員 相続アドバイザー
  • 日本FP協会認定 AFP
  • NPO法人湘南不動産コンサルティング協会理事
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • 宅地建物取引主任者
  • 住宅ローンアドバイザー

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